歌ってみた 作り方完全ガイド【MIX・ボーカル抽出まで初心者向け解説】
「歌ってみた」を公開するまでに必要な5つの工程
「歌ってみたを作りたいけど、何から始めればいいかわからない」——そう感じている初心者の方へ、この記事では録音・オフボーカル素材の準備・MIX・マスタリング・投稿という5つのステップを順番に解説します。特別なスタジオ機材がなくても、今日から作り始められる方法を具体的な操作手順とともに紹介します。
STEP 1:オフボーカル(カラオケ)素材を用意する
歌ってみたの土台となるのがオフボーカルトラック(インスト・カラオケ音源)です。入手方法は主に3つあります。
① 公式配布の素材を使う
ニコニコ動画・YouTube・Piapro(ピアプロ)などでは、ボカロPやアーティスト本人がオフボーカル素材を無料配布しているケースがあります。楽曲名+「オフボーカル配布」「素材配布」で検索すると見つかることが多いです。利用規約を必ず確認し、クレジット表記・非商用などの条件を守りましょう。
② AIボーカル除去ツールで既存曲からインストを作る
配布素材が見つからない場合は、AIを使ってボーカルを除去したインスト音源を自分で作成する方法があります。LA StudioのAIボーカル除去は、ブラウザにファイルをアップロードするだけでボーカルとインストを分離できます。Demucsモデルを採用しており、WebGPU処理で高精度かつ高速に分離が可能です。
ボーカル除去の手順:
- ボーカル除去ページを開く
- 「ファイルを選択」から元の楽曲ファイル(MP3/WAVなど)をアップロード
- AIの処理が完了するまで待つ(3〜5分程度)
- 「インスト(No Vocal)」を選択してダウンロード
ただし、著作権のある楽曲を無断で使用・公開することは著作権侵害にあたります。JASRACやNexToneが管理する楽曲を動画サイトに投稿する場合は、各プラットフォーム(ニコニコ動画・YouTube等)の包括契約の範囲内かどうかを事前に確認してください。詳しくはJASRAC公式サイトのネット配信に関する説明ページを参照しましょう。
③ ステム分離で高品質なインストを作る
ボーカル除去よりさらに高品質なカラオケ音源を作りたい場合は、ステム分離が有効です。ボーカル・ドラム・ベース・その他の楽器を個別に分離できるので、ボーカルトラックだけをミュートした状態の音源を作ることができます。
STEP 2:録音環境を整える
音質を左右する最大の要因は録音環境と使用するマイクです。高価な機材がなくてもポイントを押さえれば十分な品質で録音できます。
マイクの選び方
初心者にまず選んでほしいのがUSBコンデンサーマイクです。オーディオインターフェースが不要で、PCに直接挿すだけで使えます。代表的な製品としては以下があります。
- Blue Yeti(実売価格:約15,000〜20,000円)——多指向性切り替えが可能で汎用性が高い
- Audio-Technica AT2020USB+(約15,000円前後)——クリアな高域が特徴でボーカルに向く
- FIFINE K669B(約3,000〜4,000円)——低予算でのスタート向け入門モデル
予算に余裕があれば、XLRコンデンサーマイク+オーディオインターフェースの組み合わせが音質面で有利です。Audio-Technica AT2020+Focusrite Scarlett Solo(合計約30,000円)は定番の組み合わせとして多くの歌い手が使用しています。
録音部屋の対策
マイクと同じくらい重要なのが部屋の反響(リバーブ)です。以下の対策を行うだけで録音品質が大きく変わります。
- 布団・毛布をマイク周辺に張る(吸音材の代用)
- クローゼット内で録音する(壁の衣服が吸音の役割を果たす)
- カーペットを敷く(床面の反射を抑える)
- 窓を閉め、エアコン・扇風機の音を止めてから録音を始める
STEP 3:ボーカルを録音する
録音には専用のDAW(デジタルオーディオワークステーション)を使います。以下の流れで進めてください。
- DAWを開き、インストトラックを読み込む——STEP 1で準備したオフボーカル音源をプロジェクトに追加します
- ヘッドフォンでインストを聴きながら歌う——スピーカーで音を出すとマイクに音が回り込みます。必ずヘッドフォンを使用してください
- テイクを複数録音する——一発録りにこだわらず、同じパートを3〜5回録音してベストテイクを選ぶ「コンピング」が一般的です
- サビや高音部は別撮りする——体力や音量の関係から、サビだけ別セッションで録音すると安定したテイクが取りやすくなります
STEP 4:MIX(ミックス)で音を仕上げる
MIXは歌ってみた制作の中で最も奥が深い工程です。初心者が最初に覚えるべき基本的なエフェクトと順番を解説します。
① ノイズ除去
録音データには、エアコンのホワイトノイズや部屋の環境音が含まれています。まず最初にノイズ除去(ノイズリダクション)を行いましょう。AIを使ったノイズ除去ツールを使えば、録音の無音部分のノイズを自動認識してクリーンな声だけを残せます。
② ピッチ補正(オートチューン)
音程のブレを修正するエフェクトです。「ナチュラルな補正」と「エフェクトとしての補正」の2種類があります。
- ナチュラル補正——Speed(反応速度)を遅め(50〜80ms)に設定し、ピッチのブレだけをそっと修正。違和感なく音程を整えられます
- エフェクト補正——Speedを最速(0ms)に設定するとロボットボイスのようなエフェクトになります。ポップスやEDM系でよく使われます
③ EQ(イコライザー)
周波数を調整して声の質感を変えます。初心者向けの定番設定を紹介します。
- 80Hz以下をハイパスフィルターでカット——マイクが拾った低域のボワつきを除去
- 200〜400Hzを少しカット——こもった感じ(マスキング)を解消
- 2〜4kHzを1〜2dBブースト——声の抜けと明瞭感が上がる
- 10〜12kHzを軽くブースト——声に空気感・ツヤを加える
④ コンプレッサー
音量の大小差を圧縮して、ボーカルを聴きやすくします。初心者向けの設定目安は以下のとおりです。
- Threshold(スレッショルド):−20〜−15dB
- Ratio(レシオ):3:1〜4:1
- Attack(アタック):10〜20ms(子音を潰しすぎないよう注意)
- Release(リリース):60〜100ms
⑤ リバーブ・ディレイで空間を作る
乾いた声にリバーブを加えると奥行きが生まれ、楽曲に馴染みやすくなります。初心者がよくやりがちな失敗が「リバーブをかけすぎること」です。Dry/Wetのバランスは80:20程度(原音80%・エフェクト音20%)から始めてみてください。ディレイを短め(1/8〜1/4拍)に設定してリバーブの前段に置くと、声に自然な広がりが生まれます。
⑥ ボーカルの音量バランス
インスト音源と歌声のバランスは、インストを基準に歌声の音量を合わせるのが基本です。目安としてはボーカルのピークが−6dBFSになるようにゲインを調整し、そこからインストとの兼ね合いで±3dB程度動かして耳で判断します。
STEP 5:マスタリングと書き出し
MIXが完成したら、最終的な音量・音質の調整(マスタリング)を行います。
ラウドネスノーマライゼーションに合わせる
YouTubeは−14 LUFS、ニコニコ動画は配信プラットフォームに合わせた基準があります。マスタリング段階でLUFSメーターを使い、−14〜−16 LUFS程度を目標に最終的な音量を調整しましょう。リミッターで0dBFSを超えないようにすることも必須です。
書き出しフォーマット
- WAV 44.1kHz / 24bit——最高品質。動画編集ソフトに持ち込む場合はこちらを推奨
- MP3 320kbps——ファイルサイズを重視する場合。音質の劣化は最小限に抑えられる
書き出し後は必ず一般的なスピーカー・スマートフォン・イヤフォンの3種類で再生確認してください。プロのエンジニアも必ず複数の環境でチェックします。
STEP 6:動画を作って投稿する
音源が完成したら動画ファイルを作ります。歌ってみた動画でよく使われているスタイルは以下の3つです。
- イラスト静止画+MIX音源——最もシンプルで初心者向け。Canvaや無料素材サイトでイラストを用意する
- 歌唱動画(自撮り)——顔出しで歌っている動画に音源を差し替え
- MV風演出——DaVinci Resolve(無料)などの動画編集ソフトで映像を凝って作る
動画の解像度は1920×1080(フルHD)が標準です。YouTube・ニコニコどちらに投稿する場合もこの解像度で書き出しておけば問題ありません。
初心者向け:完全無料で始める制作環境
有料ソフトを一切使わずに歌ってみたを作りたい場合は、以下の組み合わせがおすすめです。
- DAW・MIX・ボーカル抽出:LA Studio(ブラウザ版DAW)——インストール不要でMIDI編集・録音・ミキサー・20種以上のエフェクトが使える
- ノイズ除去:LA Studio AIノイズ除去——録音ファイルをアップするだけで環境音を自動除去
- 動画編集:DaVinci Resolve(無料版)——プロ仕様の動画編集ソフトが無料で使える
最初から完璧な機材・環境を揃える必要はありません。まず手持ちの機材で一曲作ることが、上達への最短ルートです。
よくある質問
Q. 歌ってみたのMIXは自分でやるべきですか?外注すべきですか?
A. 初投稿の場合は自分でMIXを試してみることをおすすめします。理由は「どこが難しいかを体感することでMIXの依頼時に的確な指示が出せるようになる」からです。ある程度投稿を続けて「もっと音質を上げたい」と感じたタイミングでMIX師に依頼するのが現実的な流れです。MIX師への依頼はSkebやTwitter(X)で「MIX師 受付中」と検索すると多くの方が対応しています。相場は1曲あたり3,000〜15,000円程度が目安です。
Q. 著作権のある曲を歌ってみたとして投稿しても大丈夫ですか?
A. YouTubeとニコニコ動画はJASRAC・NexToneと包括契約を結んでいるため、管理楽曲であれば多くの場合投稿が認められています。ただし、楽曲によっては収益化が制限される・動画がブロックされるケースもあります。投稿前にJASRACの作品データベース(J-WID)で管理状況を確認しておくと安心です。また、ボーカロイド楽曲はP名ごとに独自のガイドラインがある場合があるので、各クリエイターの利用規約もチェックしましょう。
Q. ボーカル抽出(ボーカル除去)した音源は使っていいですか?
A. AIでボーカルを除去したインスト音源は、あくまで個人練習・リファレンス用途が基本です。動画に使用して公開する場合は元楽曲の著作権者の許可が必要になるケースが多いです。公式がオフボーカル素材を配布している場合はそちらを優先して使いましょう。
Q. 歌ってみたに最低限必要な機材は何ですか?
A. 最低限必要なのは「マイク・PC・ヘッドフォン」の3つです。USBマイクならオーディオインターフェースなしでPCに直接接続でき、録音ソフトも無料のものが揃っているので初期費用を抑えられます。スマートフォンのマイクでも録音自体は可能ですが、ノイズが多く音質面で限界があるため、できればコンデンサーマイクを用意することをおすすめします。
Q. MIXの練習はどうすればうまくなりますか?
A. 最も効果的な練習法は「好きなプロの楽曲のボーカルMIXをリファレンスにして、自分の音源と聴き比べながら近づける」ことです。EQやコンプの数値を変えながら何度も聴き直す反復練習が上達の近道です。また、YouTubeには「歌ってみた MIX やり方」「ボーカルMIX 初心者」などで多数のチュートリアル動画があるので、実際の画面操作を見ながら学ぶと理解が早くなります。