LA STUDIO

パラメトリックEQの3要素と、LA Studioの5バンドEQの操作

Device RackのParametric EQを使い、周波数・ゲイン・Q、5つの固定フィルター、操作範囲、ドラッグと比較試聴の手順を確認します。

パラメトリックEQは、どの周波数を、どれだけ、どの幅で変えるかを調整する道具です。中心となるのは周波数、ゲイン、Qの3要素ですが、すべてのフィルターで3つとも同じ働きをするわけではありません。ここではLA Studioの DEVICES にあるビルトインの Parametric EQ を操作し、音と表示の関係を確認します。

まずDevice RackのParametric EQを開く

  1. DAWで声や楽器の音声、または音源を選択済みのMIDIを再生できる状態にします。変化を判断しやすい短いフレーズを使います。
  2. 対象トラックを選び、DEVICESを開きます。表示された対象名を見て、意図せずMASTERを選んでいないか確認します。
  3. ラックの + を押し、Parametric EQ を追加します。カード内に周波数カーブと操作点が表示されます。
  4. カードの有効・無効を切り替える前に、元のフレーズを聴いて、何を変えたいか言葉にします。

同じ追加メニューの Channel EQ はLow、Lo-Mid、Hi-Mid、Highのゲインを調整する別デバイスです。また、プラグイン側には Parametric EQ 2 の専用エディタがあります。この記事で扱うのはカード内で操作する5バンドの Parametric EQ です。名前が似ていても、別の画面のバンド数や操作を当てはめないでください。

周波数は「どの高さの音を変えるか」

周波数はHzで表示され、グラフでは左ほど低域、右ほど高域です。ピーキング型では変化の中心を、ハイパスでは低域を減らし始める境界を動かします。シェルフでは低域または高域の広い範囲を調整する境界を動かします。同じ周波数値でも、フィルター種類が違えばカーブと音の変化は異なります。

このラックの周波数操作範囲は20〜20,000 Hzです。グラフの横軸は対数の配置なので、同じ距離を動かしても同じHz差にはなりません。点の位置だけで判断せず、選択バンドの数値表示も見ます。これはUIと処理コードで確認した設定範囲で、全端末でその帯域を同じように聴き取れるという測定結果ではありません。

ゲインは「どれだけ増減するか」

ゲインはdBで表す増減量です。ピーキングやシェルフの点を上へ動かすと増幅、下へ動かすと減衰します。操作範囲は−18〜+18 dBです。ピーキングとシェルフの0 dBはそのバンドで増減しない状態ですが、EQ全体が無処理になるとは限りません。初期状態でもハイパスは有効だからです。

EQのゲインと、トラック全体の音量は用途が異なります。全体に声が小さいなら先にトラックの音量を確認します。特定の成分だけが目立つときにEQで調整します。大きくブーストすると出力の余裕が減るため、ミックス全体で歪みが出ていないか確かめます。音が大きくなったことだけを改善と判断しないでください。

Qはピーキングの幅を決める

ピーキング型ではQを高くすると影響が狭く、低くすると広くなります。狭い共鳴を扱うのか、広い音色の傾向を変えるのかを先に決めると、操作の意味が分かりやすくなります。このカードではShiftを押しながら操作点を上下へドラッグしてQを変え、0.1〜10の範囲で調整します。下部のQ表示で選択バンドの値を確認します。

ハイパスのQは境界付近の共鳴に関わります。ハイパスのGainは音を変える操作として使われず、グラフの縦移動もできません。LOWとHIGHのシェルフではQ値が表示されても、この実装が使うWeb Audioのシェルフ処理はQを使いません。この違いはWeb Audioのフィルター仕様に対応しています。シェルフのQ表示が変わることを、音の帯域幅が変わった証拠にしないでください。

5バンドの種類と初期値を読む

フィルター種類は固定で、種類選択メニューはありません。下表は実装上の初期値であり、声や楽器へ必ず適用する推奨設定ではありません。LS/P1/P2/HSは内部パラメータ名、LOW/MID1/MID2/HIGHはカードの選択バンド表示です。

表示とパラメータ名固定フィルター初期設定
HP:HP Freq / HP Qハイパス30 Hz、Q 0.707。HP Gainは音声処理に不使用
LOW:LS Freq / LS Gain / LS Qローシェルフ120 Hz、0 dB、Q表示0.707
MID1:P1 Freq / P1 Gain / P1 Qピーキング1,000 Hz、0 dB、Q 1
MID2:P2 Freq / P2 Gain / P2 Qピーキング4,000 Hz、0 dB、Q 1
HIGH:HS Freq / HS Gain / HS Qハイシェルフ8,000 Hz、0 dB、Q表示0.707

周波数範囲は全バンド共通です。可変ゲインのバンドは−18〜+18 dB、QのUI範囲は0.1〜10です。LOW/HIGHのQとHP Gainは、値が存在することと実際に音へ作用することを区別します。必要な種類がこの5バンドにない場合、存在しない切替ボタンを探して作業を止めないでください。

点を動かし、戻して、変化を確かめる

  1. MID1の点を選びます。選択表示がMID1になっていることを確認します。
  2. 再生しながら横へ動かし、周波数の表示とカーブを見ます。ゲインが0 dBのままなら、周波数だけ動かしてもピーキングの増減は聞こえません。
  3. 上下へ少し動かして増減を加え、同じフレーズを聴きます。左右と上下を同時に動かすと複数の要素が変わるため、練習では一つずつ確かめます。
  4. Shiftを押した状態で上下へドラッグし、Qだけを変えます。広い変化と狭い変化の違いを耳で確認します。
  5. 点をダブルクリックすると、そのバンドの周波数・ゲイン・Qが初期値へ戻ります。カーブ全体の初期化や全処理のバイパスとは異なります。

グラフ背景のスペクトルは、その瞬間の音の成分を読む補助です。盛り上がっている部分をすべて平らにする目標ではありません。曲の中で必要な低音や声の響きまで減らすと、見た目が整っても音が弱くなる場合があります。設定カーブを変える操作と、再生中の成分を見る表示を分けて考えます。

聞こえた問題を一つずつ扱う

低い振動音が気になるなら、HPの境界を少しずつ上げ、声や楽器の厚みが減らないところを探します。太さが失われたら戻します。こもった印象なら、まずピーキングの一方で対象となる帯域を探し、必要な範囲だけ減らします。決まった周波数をすべての素材から引く手順ではありません。

高域全体の印象を調整したいときはHIGHのシェルフを少し動かし、子音や打楽器のアタックを確認します。増やすと雑音も目立つ場合があります。歯擦音のように特定の瞬間だけが問題なら、常時同じカーブをかける静的EQでは問題以外の時間も変わります。処理後に別の不都合が生まれたら設定を戻します。

効かない・変わりすぎるときの確認

変化がないときは、対象トラックが鳴っているか、DEVICESの対象名、カードの有効状態、選択バンドを確認します。ピーキングの0 dB、シェルフのQ、ハイパスのGainは、それぞれ変化が聞こえない理由になります。対象にその帯域の成分がなければ、強く動かしても期待する変化は出ません。

意図せず全体が変わる場合はMASTERへ追加していないかを、急に音が大きくなる場合は複数バンドのブーストを確認します。初期値へ戻す前に現在の設定を記録しておくと、どの変更が原因だったか比較できます。EQで元の録音の欠けやクリッピングを修復できるとは考えず、原音の状態も確認します。

操作を覚えたら、ミックスと書き出しで判断する

カードの有効・無効を切り替え、できるだけ近い再生音量で同じ区間を比べます。ソロで目立つ音色が、伴奏と一緒でも適切とは限りません。最後に全トラックを鳴らし、言葉、低音、打楽器の関係を聴いて判断します。

続きのミックス手順のガイドは、音量調整、EQ、コンプレッサー、残響、最終ミックスの書き出しを扱います。このページで覚えた操作をどの順番で使うかを確認してください。書き出したWAVも再生し、編集画面で選んだ音色と一致するか確認してから完成とします。